2006年のE3関連報道

http://retro.mmoh.jp/e6900.html

 わかりやすく、ゲーム雑誌で説明しましょう。これらの雑誌では、E3開催前から、何をどのくらい掲載するか、そのページ数が決まっています。たとえば6ページ分のE3記事が用意されていたとすると、「任天堂SCEマイクロソフトで、それぞれ2ページずつ」といったように、最初からページの割り振りが決まっているのですね。


 これは最初から「どのページに何を載せるか?」を決めておかないと、ギリギリの印刷スケジュールに間に合わないからです。取材陣が集めてきた情報の、どれの優先順位を高くすべきか、それを編集会議で決める時間はありません。逆にいうと、本来の手順を省略することで、猛烈なスピードでの記事掲載を可能にしているわけですね。


 この結果、そこには現場の空気が反映されにくくなり、さまざまな出展物が、そこそこ均等に記事として扱われることになるのです。


 これはゲーム雑誌以外の媒体でも同じです。より自由なスペースが確保できるwebでも同じ。取材陣は、渡米する前から、「じゃ、任天堂SCEマイクロソフトで、それぞれ1本ずつ記事をお願いしますね」といった依頼を受けているのですよ。何が発表されるかわからないのだから、主要マシンは、ひととおり均等な記事になるよう、事前に手配されることになるわけです。


 また、現地に到着した取材陣には、あからさまに差をつけた記事を送ることを、なるべく避けようとする心理が働きます。ゲームビジネスは先が読みづらいからです。なにしろ、一方に『ポケモン』級のソフトが出ただけで、マシンの売行きそのものが大きく変わり、勢力図が変わっちゃう市場です。ソフトが見えていない段階では、あまり差をつけた記事は書けないわけですね。


 こういったことが重なり、各社を均等に取り扱う、無難な記事が増えることになるのです。


 そんなカラクリを知っていると、2006年のE3関連報道は、かなり異例だったことがわかります。そこではPS3に対する苦言と、Wiiを絶賛する報道が、いきなり爆発していました。


「おいおい、これ面白いよ!」
「これじゃあ、いくらなんでも均等に取り扱うわけにはいかないぜ!」
「そもそも、現場の熱狂度に、こんなにも圧倒的な差があるじゃないか!」


 現地にいた取材陣の多くが、そう感じてしまったということなんですね。初めてニンテンドーDSをプレイし、その斬新さに「こりゃ面白ぇ!」と感じたときでさえ、その感情をセーブし、差をつけた記事を書かなかった取材陣も、Wiiに対する熱狂については、書くことを止めなかった。


 つまり取材陣にとって、「かつてニンテンドーDSを初めてプレイしたときの驚きよりも、Wiiを初めてプレイしたときの驚きの方が、はるかに大きかった」ということなんですよ。これが、今回のE3関連の報道から読み取れる、もっともシンプルな事実でしょう。