編集長がゆく!:DSに明け暮れた06年 ドラクエ9は500万本だ

http://mainichi.jp/enta/mantan/archive/news/2007/01/04/20070104org00m300032000c.html

 アニメ・マンガ・ゲームのトップを走る業界のキーマンたちを、まんたんブロード編集長の猪狩淳一が直撃する「編集長がゆく!」。今回は、ゲーム情報誌「週刊ファミ通」の「浜村通信」でもおなじみ、エンターブレイン社長・浜村弘一さんの登場だ。【猪狩淳一】


――06年のゲーム界を振り返ると?


 何と言ってもニンテンドーDSに明け暮れた1年でした。「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」(任天堂)の350万本(販売本数はすべて12月10日現在、エンターブレイン調べ)を筆頭に、「えいご漬け」(同)の140万本も大ヒットしたのが特徴的です。エデュケーションとエンターテインメントを合わせて「エデュテインメント」という言葉が使われるようになって久しいですが、この分野がビジネスになったというのは“革命”が起こったような驚きでした。


――DSのいわゆる「非ゲームソフト」のヒットでゲームユーザーは拡大しましたね


 「常識力トレーニング」(同)が60万本、「漢検DS」(ロケットカンパニー)も25万本が出ましたが、お客様を招いたときにどんな順番で座るか、とか以外と知らないことも多くて、文章を書く商売をしているので自信があるつもりでしたが、5級(小学校卒業程度)で書けない漢字が出てきたり、非ゲームといわれる作品なのにやっていて面白いんですね。ゲームで培ったインターフェースもこなれているし、「脳トレ」なんかだと1日10分だけプレーして、次の日少し脳年齢が上がっていて、RPGでいう成長要素があるなどゲームとしてきちんと成立している。ゲームクリエーターが持つユーザーを楽しませるノウハウを生かせば、非ゲームのネタは無限にあるので、これからも可能性がある分野でしょうね。


――それ以外のソフトでは


 「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」(ポケモン)が元気でしたね。350万本は過去最高でした。8月に発売された「ファイナルファンタジー(FF)3」(スクウェア・エニックス)が8月に発売されて、既に90万本販売していますが、これで従来からのゲームユーザーもDSに関心を高めるようになりました。それまでDSは「任天堂のソフトしか売れない」という感じもあったので、それを覆しましたね。


――PS3Wiiがとうとう発売され、即完売でした


 最初から売り切れるとは思っていましたが、PS3は、24万台とちょっと出荷量が少ないのが残念です。一方のWiiは48万台で元気がいいですね。


――確かにWiiは勢いを感じますね


 人気タイトルの「ゼルダの伝説」(任天堂)より、「Wiiスポーツ」(同)が人気があるんですよ。DSの流れもあって、ゲームゲームしたものよりこちらの方が受け入れられているのが特徴ですね。それと本体購入者のソフト購入率が1.81本というのがすごい。これはDVDプレーヤーなどのほかの目的ではなく、純粋なゲーム機としてWiiの人気があるという証明で、ファミコン時代はそうだったのですが、原点に戻ったということですね。個人的にはキャラクターを作成できる「Mii(ミー)」という機能はいいですね。つい自分のキャラクターを作っちゃう。うちの編集部でもみんな自分のキャラを作ってプレーしていますよ。


――PS3はいかがでしょう


 PSというブランドは何と言ってもメジャーですから、「FF13」(スクウェア・エニックス)や「メタルギアソリッド4」(コナミ)といったPS3向きのタイトルの発売がターニングポイントになるでしょうね。「デビルメイクライ4」(カプコン)も楽しみですし、映画のような美しい映像を実現したPS3と、ゲームの楽しさを味わえるWiiの両方が出て、ゲーム業界は広がりました。


――Xbox360もコアシステムを発売して、盛り返してきたようですね


 「ブルードラゴン」(マイクロソフト)は良くできていますよ。シナリオもしっかりしていて、注目して欲しいですね。「ロストプラネット」(カプコン)もすごくいいし、いいソフトもそろってきてこれからに期待したいですね。


――期待といえば「ドラゴンクエスト9」がDSで登場しますね


 本当にうれしいニュースでした。これまでなら08年や09年までかかっていたでしょうが、それが07年にプレーできるんですから。DSでネットワークにつながったドラクエがどんなものになるか楽しみです。DSの普及率などから考えて、史上最高の500万本も夢ではないでしょう。


――その他07年注目のタイトルは


 ドラクエ8で名を上げたレベルファイブとベストセラー「頭の体操」で知られる多湖輝千葉大名誉教授が組んだ「レイトン教授と不思議な町」(DS、07年2月15日発売予定)はおすすめですね。キャラクターやストーリーと、脳トレのような「頭の体操」の要素がうまくマッチして、これまでにない面白さを生んでいます。あとはアーケードで大人気の「三国志大戦」がDSで登場(セガ、1月25日発売予定)しますし、「モンスターハンターポータブル 2nd」(カプコン)もミリオンタイトルの期待ができますね。


――年末年始発売タイトルのオススメは


 「聖剣伝説4」(スクウェア・エニックス)は、PS3のような物理演算的な動きを実現していて、PS2でもここまでできるというのを見せてくれています。「龍が如く2」(セガ)や、いろいろと話題になった「グランドセフトオート サンアンドレアス」(カプコン、1月25日発売)などPS2タイトルもなかなかいいものがありますよ。


――07年はどんな一年になるでしょうか


 DSはこのままの勢いを保ち、WiiPS3が普及して広がっていく。任天堂の宮本(茂専務)さんがWiiで健康をテーマにしたゲームを作りたいと言っていましたが、どんな新しいものを見せてくれるのか。「ウィンドウズ・ビスタ」がXbox360と同じゲームタグを持てるようになったり、ソニーPS3で開発した高性能チップ「Cell(セル)」を家電に応用したり、ゲーム業界は5年に1度新しいチャレンジをしてきましたが、07年は次の5年に向けた実験が次々と始まっていくと思います。