着外馬から勝ち馬へ――ゲーム業界変える任天堂の成功

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 1年前、任天堂ビデオゲーム業界の落後者のように見えていた。


 同社が年末商戦向けに予定していた新しいゲーム機は、Microsoftソニーの強力なシステムと比べると技術的に後れていた。それに間抜けな名前――「Wii」(ウィーと読む)――が一部のゲームファンや批評家から冷笑を買った。その一方で携帯ゲーム市場における同社の優位は、ソニーの新製品による攻撃にさらされていた。


 だが予想に反し、任天堂はゲームビジネスの勝者になった。Wiiは同社の生産ペースと同じくらいの速さで、飛ぶように売れている。Wiiをめぐる熱狂は、同製品よりもずっと売れているニンテンドーDSの成功を目立たなくしてしまうほどだ。DSは発売から2年あまり経った今も、好調な売れ行きを見せている。


 任天堂の予想外の強さは、業界全体に幅広い変化を促している。世界最大手ゲームパブリッシャーElectronic Arts(EA)など、任天堂の強さに不意を突かれたゲームメーカー各社は、同社のゲーム機をもっと活用できるゲームの開発強化を急いでいる。「任天堂にはこの10年あまりなかった、コンシューマーとの蜜月だ」とArcadia Investmentのベテランゲームアナリスト、ジョン・テイラー氏は語る。


 任天堂の強さは、新世代ゲーム機への移行――業界ではおよそ5年ごとに起きる――がいかにハードメーカー間のパワーバランスを変えるかを浮き彫りにしている。100年以上前に花札屋として創業された任天堂は、1980年代から1990年代初めにかけて、Nintendo Entertainment System(欧米版ファミコン)とドンキーコングマリオブラザーズのような象徴的なゲームキャラクターで業界を制した。同社はその後ゲーム機トップの座をライバルに明け渡し、前世代のゲーム機においては、GAMECUBEソニーMicrosoftの後塵を拝し3位に終わった。


 「昨年のこの時期、業界中の人々が当社を過小評価あるいは軽視していた」と任天堂米国法人の上級副社長ジョージ・ハリソン氏は語る。


 しかしWiiは11月の発売以来、ソニープレイステーション 3PS3)、MicrosoftXbox 360を含む最新世代の据え置き型ゲーム機の中で一番売れている。WiiにはソニーおよびMicrosoftのマシンに比肩する高度なグラフィックス処理能力はないが、プレイヤーがゲーム内でテニスラケットやゴルフクラブ、剣を振り回せる革新的なモーションセンサー付きコントローラを備えている。Wiiの249ドルという価格も、一部のコンシューマーにとっては299ドルからのXbox 360、599ドルからのPS3よりも魅力的だ。


 2月には米小売市場で33万5000台のWiiが売れ、これに対してXbox 360の販売台数は22万8000台、PS3は12万7000台だった(NPD Group調べ)。市場全体では今もMicrosoftがリードしており、Xbox 360WiiPS3より1年早い2005年11月に登場して以来、累計出荷台数が1000万台を超えている。