PS3に策はないのか…?

http://gamersta.at.webry.info/200709/article_3.html

▼ネタがない!
 その時、しらっとした空気が流れた。東京ゲームショウTGS)の初日、ソニー・コンピュータエンタテインメントSCE)の平井一夫社長による基調講演が終わった、その瞬間である。前回の当コラムでも触れたとおり、あの場に駆けつけた人達の全てが何らかの大きな発表があることを期待していたはずだ。


 だが発表された新しい情報は、PS3用の振動コントローラとイギリスのソフト会社を買収したこと、そして仮想空間「Home」のサービス開始延期くらい。PS3PSPの連動デモもあったが、後はSCEの方針など考え方が語られるだけだったのだ。加えて言えば、TGSの基調講演らしくゲーム自体の未来や業界の方向性を語ることさえなかった。


 正直言うと早起きして幕張まで来る価値のない内容で、「俺の1時間半を返してくれ!」と言いたいくらいだ。会場で会ったゲーム専門誌の編集者からさえも、「ネタがない!」「こんな基調講演あり?」などの声が聞こえてきた。


PS3の価格は?
 この講演で一番期待されていたのは、PS3価格戦略についてである。いまだ49,800円(20GBタイプ)という価格は、他機種より高くゲーム機としては割高感が付きまとう。もちろんそれだけのコストがかかっておりどんなゲーム機より高性能なのはわかっているが、この価格ではいくら平井社長が「ゲーム機としての原点に戻る」と言っても、ゲーム機として一般には普及するものではない。


 「コスト削減を一層進める」という発言はあったものの、なぜここで価格にもっと言及できなかったのだろう。

▼値下げの可能性は?
 ではPS3に値下げはないのか。あくまで筆者の予想であるが、年内に実質的な値下げが行われる可能性があると考えている。その根拠は北米市場と前述の在庫だ。SCEは北米市場に8月、ハードディスク容量が80GBタイプの新型PS3を投入した。それに伴って従来の60GBタイプを100ドル値下げしたのだが、この値下げは実質的に在庫処理であったようなのだ。


 ネットワークサービスを強化しソフトのダウンロード販売を積極的に進めたいSCEとしては、ハードディスクの大容量化は必然である。今年6月にPS3を発売した韓国では80GBタイプのみの発売であるし、日本でも近く80GBタイプやそれ以上のものが登場してくることは充分考えられる。そのときアメリカ同様に、旧タイプとなる現行機種が実質的に値下げされるのではないだろうか。特に60GBタイプは元々オープンプライスであり、値下げ発表をすることなしに実質的な市場価格を下げることも可能だ。


 12月に発売される自社タイトル「グランツーリスモ5 プロローグ」と同時に新型PS3を市場に投入し、同梱のお買い得パックも登場、そして旧型機の値下げというシナリオは充分ありえるよう思う。年内に新型の投入はないとしても、新型投入前に旧型の値下げによる在庫処理が行われる可能性もある。


▼発表のタイミング
 だが価格改定は匂わせるだけでも、商品の売れ行きが止まる可能性が生じるものだ。昨年久夛良木氏が値下げ発表したときは商品自体が発売前であったから何の問題もなかったが、価格の発表手法やタイミングは本来非常に難しい。平井社長に策がなかったのではなく、策はあるのだが今回はまだ明らかにできなかっただけかもしれないし、そう信じたい。


 それにしても実質的に世界ナンバーワンのゲーム見本市となった東京ゲームショウの基調講演なのだ。そして今年の大きなテーマは、情報発信力の強化のはずである。値下げの発表でなくても、大きなニュースになるような内容が含まれていないのは、なんとも寂しいショウの幕開けであった。