欧州におけるXbox360の老化

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欧州のチャートで異変が起こっています。発売日が1年4ヶ月先行するXbox360に対してソフトウェアセールにおいてPS3がほぼ互角の接戦を演じているのです。[※正確には欧州と『その他』ですがその他は誤差の範囲です] こちらに欧州で発売されていて12月1日付けチャートのトップ50に入っている主要なタイトルの累計をまとめてみました。


ウイニングイレブン2008
PS3:57万7000 (対Xbox比125%)
Xbox:47万9000


FIFA 08
PS3:58万3000 (対Xbox比120%)
Xbox:46万6000


コール・オブ・デューティ4
PS3:40万9000 (対Xbox比71%)
Xbox:57万5000


アサシンクリード
PS3:43万7000 (対Xbox比92%)
Xbox:47万6000


ニード・フォー・スピード プロストリート
PS3:25万   (対Xbox比161%)
Xbox:15万5000


12/1週の欧州ソフト累計:
PS3:60万4000本
Xbox:61万1000本


どうでしょう、ジャンルによって得手不得手が見て取れますが、両ハードとも互角の接戦を演じております。しかしこれ、本当は「互角」ではいけないのです。欧州におけるハードウェアの累計を見てみますと、Xbox360が445万台に対してPS3はわずか249万台で、PS3Xbox360の56%の台数でしかありません。


本当は「対Xbox比56%」でないとおかしいのです。つまりPS3は約半分の台数でXbox360と同等以上のソフトセールを叩き出している事になります。逆に言うとXbox360のソフトセールが極端に悪いのです。


この奇妙な現象を解釈する方法はあるでしょうか?
考えられるのは欧州においてXbox360というプラットフォームが急速に「老化」しているということです。日本においてPS2が同規模のDSや時にはWiiにさえもソフト売り上げで劣るのは、発売から7年が経過してPS2というプラットフォームが寿命に近づいているからです。


欧州のXbox360にもこれと同じ事態が考えられます。しかし2年で早くも衰退というのは腑に落ちない気もします。その老化の原因は――ヨーロッパにおける反米感情、反MS感情、Xboxの故障報道、PS3の大ブレイクで一気に中古に流れたとか…ソニーブランドの後光とか色々考えられますが、考えるだけ無駄なほど複雑なものなんでしょう。とにかくこの「流れ」が半年やそこらで変わるものではないことは間違いなさそうです。


先日の決算でXbox360向けソフトがPS3の10倍の利益を上げていることを明らかにしたエレクトロニック・アーツですが、そのEAのCEOが「2馬のレースのように思われがちですが、明らかに3馬のレースです」と言い放ったのも頷けます。


英EAの副社長も「PS3は良ゲーが売れる良い市場」と言っていました。欧州のPS3におけるFIFA08の売り上げは約60万本、ロイヤリティが2000円だとすると12億円もの利益になります。欧州市場を完全に切り捨てない限り今後さらに伸びていくであろうPS3向けタイトルを切る意味はないのです。


そして欧州での事態は日本の洋ゲーファンにとってもうまく働きます。幸いなことにアメリカ人とヨーロッパ人のジャンルの好みは日本人とのそれより似ています。欧州での期待益をテコに360向けタイトルがPS3に移植あるいはマルチタイトル化さえされてしまえば、言語ローカライズのコストなど微々たる物ですから。


欧州という「アリアドネの糸」を手に入れたPS3にもはや致命傷は有り得ません。仮にアメリカを落としても日本・EUを取って柔道ルールで2:1、PS3の勝ちです。


ユーザーの絶対数で言ってもいくら北米が最大市場だからと文化や言語や生活習慣といったファクター、すなわちヒット作を出すための素朴な「手ごたえ感(マーケティング)」を無視し、日本人もフランス人[アサシンクリードUBISOFTはフランス企業]もみなアメリカ人向けのソフトしか作らないなんて仮定の方が余程「どんだけー」という話だと思われます。ここは多文化主義を採用することにして、やはり柔道ルールでPS3の勝ちですね。